相続発生時のシミュレーション
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”シミュレーションで問題点の洗い出しを”
■■■相続後の具体的な姿をイメージ
相続後の状況を、法律、税務、手続き面での視点を取り入れてシミュレーションすると、ご自身の思い描いているものと別の局面が見えてくることがあります。
誰にどれくらいの権利があるのか、相続税はかかるのか、実際の手続きはどうかなどを具体的にイメージすることで相続の問題点が見つかり、事前対策の検討が可能になります。
■■■シミュレーション例
相続が起こった時の状況をモデルケースでシミュレーションしてみましょう。
◩金融商品の分割時
亡父が生前、資産運用をしており、母は父から預金のほかに株式・投資信託を受け継いだ。
母の死後は長男・長女で預金を分け合い、株式は長男が投資信託は長女が引き継ごうと考えている。
シミュレーション
このケースで考えなければならないのは、金融商品の性質です。
長男、長女とも運用を目的として持ち続ける場合は、二つの違いは顕在化しません。
ですが、それぞれが売却して金銭に替えるときには、税金の負担で大きな差が出ることがあります。
株式や投資信託を売ったときは、売却価格から当初の取得価格(この場合は亡父の購入価格)を差し引いた利益に対して税金がかかることがあります(証券口座の種類により異なります)。
このため、株式については大幅な値上がりが、投資信託については値下がりがあるようなときは、売却時の税負担に不平等がでることがあります。
遺産分割時には換価時の税負担を税理士にご相談のうえ行いましょう。
◩兄弟相続のとき
夫婦に子供がおらず、夫には兄と姉がいる。
兄弟仲は円満で、夫の死後は妻に全財産を譲ることで納得してもらっているため、遺言をすることまでは考えていない
シミュレーション
このケースでは、実際の相続手続きをどのように進めるかを考えなければなりません。
遺言がない場合は、相続人全員で遺産分割を行い、実印・印鑑証明書を出し合わなければなりません。
夫の死後は、妻が義理の兄、姉に連絡をとり多くの書類に押印をもらわなければならず、経験上とても負担に感じられる方が多いです。
また、現時点で兄弟姉妹が納得していても、今後の事情の変更も想定しなければなりません。
例えば、夫よりも先に兄や姉が亡くなり、甥、姪が相続人となったときは当初の話どおりに分割が進まないことがあります。
また、兄や姉が認知症になり後見人が選任されたときは、当初の話は関係がなくなり、法定相続分どおりの財産を渡さなければならないこともあります。
夫婦間に子供がいないときは、たとえ現時点で問題が起こりそうでなくとも、手続き面、事情の変更などを想定して必ず遺言を作成しておくようにしましょう。
◩父母の一方が亡くなったとき(一次相続・二次相続)
妻が安心して生活できるように夫の死後は妻に全財産(6000万円)を相続させたい。
妻の死後は残ったお金を子供で分け合い、自宅は売却すればいいと考えている。
家族仲は円満で家族同士で争いになることはない。
シミュレーション
このケースでは相続税の検討を行うことなく妻に全財産を相続させると、2度の相続税申告が発生してしまいます。
まず、夫の相続時には、妻は配偶者控除を受けることができ、相続税はかかりません。
ですが、この控除を受けるための1回目の申告作業が必要となります。
その後、妻の相続時に相続税がかかるため2回目の申告作業を行い納税することになります。
申告には税理士費用が数十万円からかかり、また労力がかかる手続きでもありますのでこのような結果は避けるべきでしょう。
このケースでは税理士に相談の上、夫の相続時に妻の二次相続を考慮したうえで、妻と子供に財産を分散させて分割を行うとよいでしょう。
この割合は妻の生活保障と相続税への影響を考えて決めましょう。
なお、この事例は生前贈与による対策を行うと大きな効果が見込めるケースでもあります。
暦年贈与などを使い、予め妻や子供に財産を分散させることで、夫・妻とも相続税の申告を不要とすることが可能になります。
このように、ご自身の希望通りの相続をした場合のシミュレーションを行うことで、法務、税務上の問題点が見つかり、それらの具体的な対策が検討可能になります。