成年後見人は相続対策できない?
- カテゴリ
-
- 相続Q&A
”成年後見人の相続対策はほとんどが制限されます”
認知症の方が法律行為を行うときには成年後見人が代理します。
後見人には財産の保全義務があり、資産の不利益な流出が禁止されるため、以後の相続対策は極めて困難になります。
■■■成年後見人ができないことは?
贈与はできない
成年後見人には本人の財産を保全する義務があり、本人の財産を無償で贈与することはできません。
相続対策の基本スキームである贈与による対策はできなくなります。
遺言の作成は事実上できない
法律上は、被後見人が判断能力を一時回復したときには医師二人以上の立会いをもって遺言の作成ができることとされています(民法973条)。
ですが、この立会に協力してくれる医師は現実にはほとんどおらず、認知症になった後は遺言はできなくなると考えたほうが良いでしょう。
資産の売却には制限がある
資産の売却は合理的な理由があるときに限りすることができます。
遊休地や空き家など固定資産税がかかるだけの不動産であれば、売却することが本人の利益にもかなっているため後見人の判断によりすることができると考えてよいでしょう。
ただし、この場合、売却価格は時価を下回ることはできません。
一方、収益物件の場合には収益率と売却代金などのバランスを考慮したうえでの判断になります。
売却の必要性を十分に説明できる場合(収益率低下の事実や手元資金の不足など)には認められるケースもあります。
なお、売却資産が自宅(施設に入所前に住んでいた自宅も含みます)の場合は家庭裁判所の許可審判が必要となり、この場合は帰宅可能性が判断材料に加えられます。
担保設定は原則できない
被後見人が所有している土地の上に、担保設定を行うことは原則できません。
建物建築資金の担保設定などは、新たに担保を負担する必要性が説明できないケースが多く、消極的に判断されることが多いでしょう。
以上のように成年後見人が選任されると、原則、相続対策はできないと考えたほうが良いでしょう。
本人の手元資金が少ないときに、資産管理会社に不動産を時価で売却するなど、本人のために行った行為が結果的に相続対策と合致したケースなど極めて限定的な場合にのみ認められます。