相続財産の棚卸
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”財産の調査は法務・税務の視点から”
相続財産の範囲は多岐にわたり、普段資産として意識していないものが相続財産に含まれることもあります。
資産を正確に把握しないまま対策を行うと、遺言が有効に機能しなかったり、相続時に思わぬ税負担に直面することがあります。
法律上の視点、税務上の視点を取り入れたうえで、適切な財産の棚卸を行いましょう。
■■■見落としやすい相続財産
自宅や預貯金、有価証券などは普段から資産として認識しているかと思います。
生命保険も相続財産の一部として考えている方が多いでしょう。
ですが、これらのなかにも見落としやすい資産があり、また法律上、税務上で異なった評価がされるものもありますので、特に注意すべき資産について順に確認していきましょう。
不動産のなかでも固定資産税を払っていないものは見落としやすいので注意しましょう。
例えば自宅前の私道や、昔に父母から引き継いだ田舎の山林などが固定資産税の明細に乗らずに見落とされるケースがあります。
相続後に気づくと、自宅を売却できなくなることもありますので、対策時には名寄帳などの証明書類をもとに確認を行いましょう。
いわゆる「名義預金」と呼ばれる預金には注意が必要です。
名義預金とは口座名義は子供になっていても、税務上は親の資産として扱われる預金です。
親が子供のために口座を作って毎年少しずつ貯めていた預金などは、生前にきちんと贈与の形式をとっていないと名義預金と認定される恐れがあります。
相続税の試算を行うときはこれらの周辺事実もご確認下さい。
生命保険は法律上と税務上の取り扱いが異なります。
法律上は受取人固有の財産として取り扱われます。相続財産には含まれず、他の相続人の同意を得ることなく払い戻しできるので様々な対策に有効活用できます。
一方、税務上は相続財産に含まれるため、相続税の計算時に保険金を計上します。
※ 契約者・被保険者・受取人の構成により上記と異なる取り扱いがされることもあります。対策時には保険契約の内容もお伝え下さい。
オーナー経営者の方は自社株の評価は必ず行ってください。
普段、自社株は財産としてではなく会社の経営権として認識されている方が多いかと思います。
ですが、いざ相続・事業承継の局面に入ると自社株の価値が予想以上に高く、買取資金や納税資金に苦慮するケースが多くあります。
予め自社株の価値を把握しておくことで、・生前の安い時期に譲渡する ・事業保険などで納税資金を作る ・事業承継税制を活用して税金を払わずに承継する、など色々な対策が可能となります。
自社株同様、会社への貸付金も見落とされやすく、また非常に影響が大きい財産です。
経営者の方は会社に運営資金としてお金を入れ、長年積み上げた貸付金が数千万円になっているケースもあります。
この貸付金は原則、額面通りに評価されてしまいます。
貸付金は、債権放棄や資本金に組み替えるなどの手法で、相続が起こる前に解消していきましょう。
この対策は税務・会計に視点が必要となるため、税理士にご相談いただきながら対策を行います。
■■■棚卸時の注意点
書類に基づいて正確に確認
保険や金融商品などを何度か追加契約されている方や、代々多数の不動産を引き継いでこられた方などは、ご自身でも財産の全容を把握されていないことがあります。
相続対策をとるときは、これを機会とし金融機関や証券会社、市区町村などから財産一覧表を取り寄せ保有資産を整理するようにしましょう。
放置していた不要な資産などは随時処分し、資産の集約を行うことも有効な相続対策のひとつです。
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資産の変動可能性を考慮しましょう
相続対策を取ってから相続が発生するまで長い期間が空くこともあり、対策後に資産が大きく変動することがあります。
例えば、遺言作成時に所有していた収益マンションを売却した場合、会社の経営が順調で自社株の評価が大きく膨れ上がった場合などは、相続の対象財産や相続税額が大きく変わってきます。
予めある程度のギャップを想定したうえで対策を行い、大きな資産変動があった場合には適宜対策を修正していきましょう。